分子神経生物学 森研究室

　C. elegansが、温度走性行動を示す時には、非常に微妙な温度差を感じ、 飼育されていた温度を記憶している必要がある。これまで、AFDニューロンの生理学的性質については不明であったが、 近年、カルシウムセンサーであるcameleonをAFD ニューロンで発現させることで、 AFDの温度変化に対する応答を測定することに成功した。測定の結果、AFDは温度上昇に反応し、 さらに興味深いことに温度上昇に応答する性質は、線虫が記憶している飼育温度に依存することが明らかになった。 この結果から、温度受容ニューロン自体が温度記憶の一端を担っている可能性が考えられる。

図3　
カルシウムセンサー　cameleonをもちいた温度受容ニューロンAFDの活性測定。
(A) C. elegans頭部に存在する温度受容ニューロンAFDの模式図とカルシウムセンサーcameleon遺伝子を 発現しているAFDニューロンの温度上昇にたいする応答。写真左は温度上昇前、 写真右は温度上昇中のAFDニューロン(青色：低Ca濃度、赤：高Ca濃度)。
(B) 温度を15℃から25℃に変化させた時の、cameleonタンパクの蛍光シグナルの変化(ratio F535/480)。

1.温度走性の神経制御モデル

2.温度走性に関与する遺伝子

3.神経回路の活動の生理学的モニタリング

4.飼育温度忌避行動の分子機構ー記憶・学習の解明を目指して